このプロジェクトの特徴: 精細な古典研究が生み出した最新鋭のテクノロジー。

MacOS X Leopard に搭載されたチベット語環境は、世界でも有数のチベット語文献コレクションを誇る大谷大学だからこそ生み出せた、極めて地味であるが古典文献の研究に基づく精細な研究データと、フロンティア精神に富む最新鋭のテクノロジーとの結晶です。

大谷大学だからこそ生み出せた最新鋭の技術

 本学は19世紀の終りに日本ではじめて本格的なチベット研究を開始し、現在もなお最先端の技術を駆使して最先端の研究を行ない続けています。本学図書館には、能海寛(1896-1901)や、本学で教授をつとめ、長くチベット語を講じた寺本婉雅(1872-1940)らが将来した1330函にもわたる数多くのチベット語文献が所蔵されています。とりわけ、寺本が1900年に将来した「北京版西蔵大蔵経」に対する研究は、本学の研究の核として世界のインド仏教研究、チベット仏教の研究のフロンティア的役割を常に果たしてきました。

  80年代後半よりコンピュータでのチベット語環境の実現が今後の研究活動の基本となり、かつその将来性と必要性に注目した大谷大学は、世界で唯一OSレベルでのチベット語環境の整備に力を入れ、さまざまな研究機関と連携して世界最高レベルのチベット語環境を実現し、その成果をすべての研究者、チベット語を使用するユーザに無償で提供することにつとめてきました。この実績は常にアップル社をはじめとするコンピュータ会社に高く評価されてきました。

  21世紀にはいり、このチベット語環境が単にフリーウェア(無償で使用できるソフトウェア)に留まるのではなく、オペレーティング・システムの一部として世界的に普及することが重要であると考えた大谷大学は、アップル本社のオペレーティング・システムの開発部門と連携し、共同開発の結果、今回のMacOS X のメジャー・アップデートとしてチベット語環境を無償で提供することとなったのです。このようなパートナーシップは、地道な古典研究によって蓄積された精細な研究データをもつ大谷大学だだからこそ可能となったのです。

チベット環境を利用した研究出版物

 大谷大学がこのチベット語環境を整備したいと考えたきっかけは、研究成果を出版し、印刷された出版物と同時に、互換性のあるチベット文による汎用テキストデータを残すことにありました。

 90年代よりチベット語環境を無償で提供してきた大谷大学の研究成果は、国内外の研究機関でひろく活用され、研究機関相互の連携の一助となってきました。

 その一例としては、本プロジェクトと早くから連携をとってきた財団法人東洋文庫チベット研究委員会では、毎年数冊のチベット語を使用した出版物を刊行し、アジア諸国の多言語に対応した、電子カタログデータベースの構築などが行われてきました。これらのデータベースで構築されたデータが異なった研究機関相互に共有できたのは、本プロジェクトが当初より世界に先駆け、それを目的として推進されてきたからにほかなりません。

研究室だけではなく、その恩恵を一般社会にも還元する

 デプン・ゴマン学堂日本別院では開発中の段階より、この環境を導入し、チベット語環境の使いやすの向上のためにチベット人僧侶たちに協力してもらいました。日本別院では、日常の業務にこのチベット語環境が活用され、インドの本山とのコミュニケーション、寺院の日々の現金出納帳、遠く離れた家族とのコミュニケーションなどチベット人の僧侶たちがチベット語で行いたいことが、より簡単に、かつ便利にできるようになりました。

 このプロジェクトが単に研究室だけのものではなく、その恩恵が一般社会にもひろく還元できるようにという本学の大乗仏教の精神にもとづく研究コンセプトに由来します。今回MacOS X の一部としてすべてのMacユーザに提供されるために、­本学がアップル社にチベット語環境を無償で提供したのもその活動の一環であることを示しています。